2018/09/09「和たから講座・清右衛門のみちくさ部」
先日9月9日(日)、北鎌倉 たからの庭で毎月開催されている「和たから講座 みちくさ部」に二回目の参加をしてまいりました。
今回の参加者は、私を入れて7名。中学一年生の男の子が初参加でした。
将来ある中学生が参加していることを考慮して、今回は「どうして植物を勉強するのか?」のお話から始まりました。
私たちの身の回りは、実は植物で溢れています。住居・衣服など、人間は植物を活用して暮らしています。
人間が生きていく上で役立つだけでなく、植物は他の生き物の棲み家や食べ物にもなります。
世界には人間しかいないわけではありません。この世界のことを知るには、大切な構成員である植物を知ることが不可欠です。
また、おもしろいものを見つけながら暮らした方が人生は楽しくなります。
現在大学院進学を控えて、自分の研究の意義を見つめ直している私には、別の分野とはいえ、大変ためになるお話でした。
※野草の採集は、講師のご指導のもとに行っています。許可のない採集はくれぐれもご遠慮ください。
神奈川県を上空から眺めると、住宅だらけの中にぽつんと緑が多い場所があります。山が険しくて、急な斜面や崖に囲まれたその中に鎌倉があります。
斜面が多いということは、日が当たらず暗い場所が多いということです。それでは植物はエネルギーを作り出せず、作物が育ちにくい環境になります。
そこで、限られた日光の中で生きることができる種類の植物のみが生息するようになります。他の場所とは違った種類の植物が多くみられるのです。
たからの庭の谷間だけで、形・場所・大きさのさまざまな200種ほどの植物がみられるそうです。
この日はとても暑かったので、比較的涼しい上の段からの出発です。木陰に入った途端、急に涼しくなりました。
「樹の下に来ると涼しくなるのはなぜでしょう」と問いを投げかける部長。参加者は首をかしげます。
部長曰く、
①日が遮られるため
②木が水分を蒸散するとき熱が奪われるため
③植物は人間に比べて冷たいため
以上のような理由があるそうです。
まずは日陰の植物を観察します。ヤブランを発見。
ヤブランは六枚の花弁のある小さな花をたくさんつけます。ひとつひとつが小さいため、集まって虫から目立つようにしているのです。一方仲間のヒメヤブランは五つのみ。アイドルのAKB48と嵐に例えてわかりやすく説明してくださいました笑
ヤブランの根には瘤があり、漢方名は麦門冬(バクモンドウ)。咳止め、痰切りの薬として用いられます。風邪の引きはじめに用いる葛根に対し、風邪の治りかけの頃に用いられるそう。
次に見つかったのはバラ科のダイコンソウ。イチゴに近いグループだそうで、確かにヘビイチゴなどに花が似ていますよね。
ダイコンソウはトゲトゲの実をつけます。このトゲを動物の毛につけて種を遠くに運んでもらうのです。オナモミ、イノコヅチ、コセンダングサ、ヌスビトハギなどと同じひっつき虫ですね。
葉柄の形がダイコンに似ていることが名前の由来だそう。
次に山菜好きの間で大人気のシオデが。食べられる野草に詳しい参加者さんが、大興奮でした。こちらはもう育ってしまっていますが、新芽を食べることができるそう。
次に見つかったのはヒカゲイノコヅチ。イノコヅチにはヒカゲイノコヅチとヒナタイノコヅチとがありますが、ヒナタイノコヅチは少し毛深いそう。
アズマネザサは、葉の裏が半分マットな質感で半分ツヤのある不思議な笹。
葉の上に模様のあるこちらはハナタデ。「蓼食う虫も好き好き」ということわざで馴染みのあるタデですが、辛みのあるのはヤナギタデという種類。また、染料として利用される藍もタデ科の植物。
食用として馴染み深いミツバも発見。しかし、普段食しているものよりもだいぶ大きな個体。実は地面に生えるミツバは大きくて固くなってしまうので、食用のミツバは水耕栽培で育てられるそう。
葉が波打ったこちらはチヂミザサ。
種がベタベタしていて、動物にくっついて運ばれます。部長の実家の庭にたくさん生えていて辟易したそう。
虫の巣を発見。残念ながら糞しか見つかりませんでした。植物は他の生き物とも関係・利用しあって生きています。
狭い範囲にこれだけたくさんの種類が見つかります。
アオジソの親戚のエゴマ。野生種はレモンエゴマ、栽培種をエゴマというそう。非常に近い仲間で、すぐに雑種を作ってしまうといいます。
シソ科らしく、四角い茎をしています。
シソ科の葉とイラクサ科の葉は大変似ています。ちょうどよくエゴマとカラムシが隣り合って生えていました。
イラクサ科は風媒花のため、虫を呼ぶ必要がなく、地味な花をしています。
カラムシから作った布を苧麻といいます。種のまわりのワタを使う木綿と違い、茎の皮から繊維をとります。
苧麻はラミーともいい、ラミーカミキリの和名の由来もカラムシからです。
カラスウリには虫こぶができていました。ハエの仲間の幼虫が茎を棲み家にしながら汁を吸って暮らしているそうです。
名前にミョウガとありますがショウガ科ではなくツユクサ科。葉がミョウガに似ていることから名付けられたそう。
実の中にはカラカラの種がたくさん詰まっていて、よく殖えるそう。
海岸沿いに生息するガクアジサイと違い、崖に生えるタマアジサイ。鎌倉に特徴的な植物です。球状のつぼみがかわいいですね。
花は20チームくらいに分かれていて、いっせいには咲かず、タイミングをずらしてだんだんと咲くそう。
実はバイキンマンに似ていて雌しべが二本あります。種は埃のように小さく、苔にくっついて殖えるそう。
なんと変形菌らしきものを発見!粘菌ともいい、アメーバに近い仲間で、移動しながらバクテリアなどを食べます。
(そっくりのカビやキノコの可能性もあります)
病気にかかった葉。湿気が多いと表面に生えてしまうが、害はないそう。
アカバナ科のミズタマソウ。この実も動物の毛について運ばれるそう。
モミジに絡みついたクズ。あまりに繁茂すると、絡みつかれた植物が日を浴びれなくなり、枯れてしまうそう。
ヤマノイモはむかごでクローンを作って殖えます。葉をすり潰すだけでぬめりが出ます。
リンゴの仲間の海棠に似ており、秋に咲くため名付けられたシュウカイドウ。雄花と雌花で違う形をしています。
湿ったところに生えるクラマゴケ。苔ではなくシダの仲間です。
※野草の採集は、講師のご指導のもとに行っています。許可のない採集はくれぐれもご遠慮ください。
植物観察のあとはかぼちゃプリンでほっこり。スパイスが利いていて美味しかったです。
生えている植物を見るだけで地質がわかるという部長。鎌倉は岩盤なので、気の根が横に伸びるそう。
太い根は体を支えるためにあり、細根は栄養をとるためにあります。根を伸ばすホルモンは枝先から出るため、枝を切ると抑制されるそう。逆もまたしかりで、根の先端から枝を伸ばすホルモンが出るといいます。
苗を植え替えると、種から育てるよりも台風などでひっくり返ってしまうリスクが上がるそうです。
植物は動けない分、その場で起こることによって柔軟に成長を調整することができるといいます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!