2020/10/24「野草さんぽ@帰化植物見本園」
10月24日、365日野草生活®のんさん主催の「野草さんぽ@帰化植物見本園」が開催されました。帰化植物見本園ボランティアのシオザキさんや江東植物愛好会のおふたりの解説もありの豪華ツアーということで、雑草好きの私、この機を逃すまいと参加してまいりました!
木場公園の帰化植物見本園は、日本で唯一の帰化植物を集めた植物園。まずは帰化植物園の成り立ちについて、まさにこの園の創設者、江東植物愛好会の渡辺さんからお話をいただきました。
江東区はその大部分が江戸時代以降に作られた埋め立て地。そこに現れた外来の野草が注目を集めたことで、地域の方々が『江東区の野草』を作成。これが好評を博し、区民から実際に植物を見たいという声が上がったのだそう。しかし、埋め立て地の多くは一般人の立ち入り禁止。そこで、江東植物愛好会のみなさんによって、木場公園にこの帰化植物見本園が設立されたのだといいます。
見本園は17の区画に分かれており、おもに科ごとに植え分けられています。交雑などの問題もあるようですが、分類ごとに並べられているお陰で種ごとの違いが観察しやすいのです!
ここからは一種ごとの備忘録なので、感想だけ見たい方はこちらまで飛んでください。
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【エリア1】
キク科。熱帯アメリカ原産。ウスベニニガナよりさらに鮮やかな色をしています。
カタバミ科。南アフリカ原産。オキザリスの繁殖力は凄いですよね……★
キジカクシ科。熱帯アフリカ原産。硫黄島から採取したそう。空気浄化作用があるとして人気のサンセベリアです。うちでも栽培しているのですが、寒さに非常に弱いので地植えはできません。園ではムラサキオモトと共に、冬は鉢上げしてボランティアさんの家で越冬させるそう。
【エリア2】
ヒユ科。北アメリカ南部原産。大阪の浜寺公園で発見されたそう。
キク科。北アメリカ原産。這うように伸びてきたのでハイアワユキセンダングサかと思っていたらコセンダングサだったそう。大きく育ちすぎて全く「コ」ではないと話題。この観察会のために残しておいてくれたらしい。★
アブラナ科。中国北部原産。雑草を刈る際、双葉が生えていたので残しているそう。一年草は、どれを刈ってどれを残すかの判断が重要になってくるといいます。★
セリ科。ヨーロッパ原産。
タデ科。ヒマラヤ原産。みなさんご存じ、園芸店ではポリゴナムとして売られている人気のグランドカバー。繁殖力が強く、アスファルトの隙間から繁茂しているのをよく見かけますよね。渋谷川なんかすごいことになっちゃってます。しかし人為的に育てようとすると案外難しいそうで、肥料をやってのびのび育ててもなかなかうまくいかないそう。★
キンポウゲ科。中国原産。和風庭園のイメージが強いですが、実は中国原産。★
【エリア3】
キク科原産。花粉症の方にとってはにっくき奴。アレロパシー作用もある厄介な奴ですね。でも一年草ながらワンシーズンでここまで大きくなる生命力に感服してしまうんだよなあ……★
背丈の二倍ほどあるオオブタクサ(あまり喜ばしいものではない) pic.twitter.com/spwBSSRwLi
— 長谷川🌱 (@hase2_animal) August 29, 2020
キク科。北米原産。
シソ科。在来種。
シソ科。地中海沿岸原産。立て看板に流通名(オレガノ)を書くとむしられてしまうので和名を書いているそう。
シソ科。ヨーロッパ原産。
アオイ科。在来種。紅葉が綺麗。
ナス科。南アメリカ原産。
【エリア4】
ヒルガオ科。北アメリカ南部~メキシコ原産/在来種。見分けるのは難しい。
バラ科。ヨーロッパ原産。
ゴマノハグサ科。ヨーロッパ原産。線路沿いに生えてくるお化けみたいにデカいやつ。名前の通りビロードのような肌触りの葉。「モウズイカ」は「毛蕊花」と書く。凄まじい量の種を作る。★
アオイ科。南アメリカ原産。近年河川敷などに進出している。「矢の根」は葉の形から。★
【エリア5】
アオイ科。東南アジア/熱帯アメリカ原産。葉の縁が赤いのがアメリカキンゴジカで、そうでないのがキンゴジカだそう。見分けるのは難しい……
アオイ科。インド原産。モロヘイヤのこと。
キク科。熱帯アメリカ原産。関東には生息していないレアな帰化植物。標準和名はアメリカブクリョウサイというのだそう。カラスノエンドウの標準和名がヤハズエンドウだからといってそう呼ぶかといえばう~んという感じなので、素人が呼ぶには呼びやすい名前でいいんじゃないですかね。★
キク科。北アメリカ原産。芋を食用にする。のんさんにとってはお馴染みの野草。
ナス科。北アメリカ原産。小さい実がたくさん並んでかわいい。雑草のイメージが強いですが、浅草寺のほおずき市で売られていたのは元々はこのセンナリホオズキだったそう。今は売られているのを見ないですね。
【エリア6】
ユリ科。台湾原産。うちの庭にも生えてくる、繁殖力が凄まじいやつです。いかんせん花が綺麗なので、あまり積極的に駆除されないんですよね。多年草である上に、作る種の数が驚異的。★
ヒルガオ科。熱帯アメリカ原産。マルバルコウよりは雑草として拡がっておらず、まだ園芸種としてのイメージが強いです。★
【エリア7】
キク科。アメリカ東南部~メキシコ、西インド諸島。キク科には珍しい木本。雌雄異株で、この木は雄木だそう。いくつかの植物園などに挿し木で寄贈したそう。
ススキノキ科。地中海沿岸~西アジア。旧分類ではユリ科だったが、ススキノキ科に移動したそう。ヤブカンゾウなんかと同じですね。葉がストロー状になっているのを見せていただきました。
【エリア8】
トウダイグサ科。北アメリカ東部原産。野生のポインセチア。熱帯の植物ですが、最近は越冬して雑草化しているのをよく見かけますね。トウダイグサ科だけあって特徴的な杯状花序があります。★
トウダイグサ科。アフリカ北東部原産。有毒植物。
ナス科。中央アメリカ~南アメリカ原産。有毒植物。花岡青洲が開発した麻酔薬に使われていたらしい。
ツノゴマ科。イシガケチョウ幼虫の顔に似ている! 動物に鉤爪をひっかけて種子を運ぶひっつき虫。本体の部分にも返しがついていてなかなか外れません。
コミカンソウ科。インド洋諸島。ナガエコミカンソウともいう。うちのまわりに生えているのはもっぱらこっちですね。意外と大きくなって木質化してしまう困り者です。★
バラ科。ヨーロッパ原産。
【エリア9】
ミツバオオハンゴンソウ
キク科。北アメリカ原産。ルドベキアとして人気の園芸種ですね。別に三つ葉じゃないなと思ったら、根生葉が三裂してるんだそう。ハンゴンは「反魂」の意。
キク科。北アメリカ原産。セイタカくならないアワダチソウ。これを見るとアキノキリンソウ属というのにも納得しますね。
キク科。南アメリカ原産。江東区塩崎で発見されたことから名付けられたそう。マリーゴールドの仲間だけあって特徴的な匂いがする。マリーゴールドの匂いは苦手なのですが、こちらはいい匂いでした。人の背丈を超えるほどにモリモリ育っています。
帰化植物であっても全ての種類に和名が提唱されることは、日本で生活していると当たり前に思えてしまいます。しかし、生物種に対し学名しか存在せず、その国での呼び名がない国も多いと聞きます。それだけ日本は、一般の人々の中に、それぞれの種に親しみたいという気持ちが大きいのではないかと考えています。
【エリア10】
イネ科。中央アメリカ原産。名前の通りイガイガで痛い。
キク科。北アメリカ原産。
キク科。北海道に分布。国内外来種として全国に侵略中。
【エリア11】
カンナ科。カンナの原種だそう。
成長速度をそろえるため、種を蒔くタイミングにも気を使っているそう。
【エリア12】
キク科。北アメリカ原産。
【エリア13】
キク科。暖帯~熱帯に広く分布。
キク科。アメリカ原産。総苞片がかわいい。
キク科。北アメリカ原産。他のセンダングサより、葉が細かく切れ込む。
【エリア14】
キク科。ヨーロッパ原産。
マメ科。インド・東南アジア・中国南部の熱帯地方原産。もふもふのタヌキマメと違って、莢はつるつるしてるんですね。のんさん曰く、今回の観察会の主役。豆を振るとマラカスみたいに音が鳴るんです。放っておくと爆ぜてしまうので、ニスを塗って保管するといいそう。★
マメ科。熱帯アメリカ原産。根粒菌によって窒素分を固定できるマメ科のため、緑肥に使われることもあるそう。ネムノキと同じく就眠運動をする。
【エリア16】
キク科。北アメリカ原産。
クマツヅラ科。在来種。アレチハナガサやイワダレソウやシチヘンゲなどクマツヅラ科の植物はよく見ますが、クマツヅラは初めて見ました!
【エリア17】(湿生)
イグサ科。在来種。在来のイグサは茎の中が詰まっていますが、外来種であるコゴメイは竹のような節があるのを見せてもらいました。
デンジソウ科。在来種。こう見えてまさかのシダ植物だそう。
カヤツリグサ科。ヨーロッパ~アフリカ原産。塊茎を食用にできるらしい。キハマスゲともいわれる。最近街中でもよく見かける。★
わざわざ植えられているなんて……!と思ってしまうような身近な雑草から、日本にまだ拡がっていない希少種まで、たくさんの帰化植物が集められた、圧巻の植物園でした。
放っておいても生えてきてしまう雑草。でも実は、移植に弱かったり、思った通りの場所に生えてくれなかったり、きちんと管理して栽培するのはとても難しいのです。ボランティアさんたちの苦労が偲ばれます。
見て触って匂いを嗅いで、ときには鳴らして音を聞いて。五感で楽しめるのは実物ならでは。書物だけでは得られない体験です。
外来種というと嫌われ者のイメージですが、人間による開発で在来の植物が住めなくなってしまった場所にも生えてきてくれる、立派な都市の緑の一員です。
セイヨウタンポポが在来タンポポを追いやった、オオイヌノフグリがイヌノフグリを追いやったなどといった表現が用いられがちだけれど、人間が開発してしまった土地にも生えることができるのが前者ってだけなんだよな。追いやったのは人間。 pic.twitter.com/ZQW3JtmexA
— 長谷川🌱 (@hase2_animal) May 7, 2020
アレロパシーのあるセイタカアワダチソウ、ナガミヒナゲシ、ナヨクサフジなどは実際に他の植物を追いやっているけれども。 pic.twitter.com/xuR3uZDXlw
— 長谷川🌱 (@hase2_animal) May 7, 2020
植物の分野では、他所から来たことを示す「外来種」ではなく、この地で野生化したことを示す「帰化植物」という言葉がよく使われます。複雑なバランスで成り立っている生態系にとって何が問題となるのか簡単にはわからないけれど、他所者だからといって安直な敵対視をせず、まずは相手のことを知ろうとするのが、防除にとってもよいことだと思います。
いろいろなものが失われた上に成り立っている景色だけれど、私が自然に興味を持つに至った原風景はこういった景色なんだよな。 pic.twitter.com/BOO8kj97p1
— 長谷川🌱 (@hase2_animal) 2020年7月28日
のんさん、シオザキさん、江東植物愛好会のおふたり、それぞれの知識量が凄すぎて、耳が足りないくらいでした!
来春にも開催予定とのことですので、都合がつけばまた参加したく思います♪
ミドリアムでは「帰化植物写真展」が開催中です。
帰化植物見本園のボランティアを募集中だそうです!
虫も撮ったので見てね↓